『特務艦「宗谷」の昭和史』大野芳(新潮社)読了

俺の世代にとっての宗谷といえば、南極観測船「宗谷」。というよりも、その前身を知る人のほうが少ないのではないかと思う。

俺もつい最近まではそうだった。ひょんなことから(というかまあ『艦これ』だ)、実は戦前から活躍する類まれな幸運艦(船)ということを聞き、興味を持って手にとったのが本書だったんだが、その波乱の生涯に驚いた。

宗谷は、耐氷型貨物船(地領丸)として誕生してから、特務艦→引き揚げ船→灯台補給艦→南極観測船→監視船と実に5度も役割を変えながら戦前から戦後までを駆け抜けた船だった。

その来歴とともに語られる歴史にはさすがに感慨深いものがある。

『艦これ』にも実装されんかなあ……。

「丸太町ルヴォワール」円居挽(講談社)読了

京都の地名がいっぱい出てて、知ってる人は楽しいよ、という話を聞いたので読んでみた。

まずは序盤のペダンティックなやり取りに多少辟易しながら読み進める。

が、中盤になるとスピード感が出てなかなか楽しくなる(とある叙述トリックにも引っかかった)。

そこまではよかったんだけど、終盤の二転三転する推理劇は正直どれでもええやん、という感じ。

いわゆる「本格」でない以上、どういう結末でもありえるわけで、俺としてはあっちこっち振り回されるのは鬱陶しかった。

「論理的な解決」に対するアンチテーゼとしては双龍会をやってるわけで、そしてまたそれはおもしろく仕上がってるんだから、双龍会後の展開にはやり過ぎがあったように思えた。なお、最後のボーイ・ミーツ・ガール的展開はそれなりによかったとは思う。

続編もあるようだけど、とりあえず読む気はしないかな。

『クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえあんてぃーく』内山靖二郎(エンターブレイン)読了

リプレイを読むのはチョー久しぶり。でもなかなかおもしろかった。

『クトゥルフ』はルールブックを読んだだけで、自分ではプレイしてなかったので、PCが正気を失うのを楽しむってイメージがいまいちつかめなかったんだけど、なるほど、こういうふうにキャンペーンでやると楽しいかもね。

『アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者 1~8』榊一郎(講談社)読了

アニメを見た友人の評価が高かったので読んでみた。

う~ん、なんというか……。「まったく価値観の違う異世界にオタク文化を国家事業として持ち込む」というコンセプトは非常によいと思う。

事実、オタク差別と異世界での人種差別、とか文化による侵略行為とか掘り下げられそうなネタが次々と出てくるんだけど、どれもこれも甘いフォーカスのままで〆ている。さらに物語のディテールも適当。そしてどうもこれ、意図的にやってるみたいなんだよな。描き切るイメージがないからなのか、それが筆者の「ラノベ」だからなのか判らないけど、いずれにせよこれが筆者の「リアリティ」で、それが支持されてるんだろう。

『はたらく魔王さま!』のように曲がりなりにも正面から描いたほうが骨太な物語になったのにと思うと残念。そのライトさが人気の理由になってる(かも)ということも判るんだけど……。

しかし最近ミュセルみたいな控え目ヒロインは珍しくて逆に新鮮。

『プシュケの涙』柴村仁(アスキーメディアワークス)読了

評価が高かったので読んでみた。

感受性豊かに読めば、たいへん切ない物語、だと思う。

が、ビミョーにミステリ的な仕掛けが入っているため、「そういう」視点で読んでいた俺には、最後まで何ごともなく終わってしまい、受けた肩透かし感が強く、カタルシスを得られなかった。とはいえ本編にも絡んでる部分なので「ヘタにミステリ要素入れるな」とも言いにくい。

中学生ぐらいでハマる人はドハマりするだろう。そういう魅力は持っている本。

『教養としての経済学』斎藤謹造(日本評論社)読了

同名の別書籍と間違えて図書館で借りてしまったんだが、そのまま返すのももったいないので読んでみた。

大学の講義みたいだなと思ったら、講義ノートがまとめられたものだった! という感じで、淡々としていて、正直面白みには欠ける。

ただソ連も健在な1986年に発行されただけあって、今から見てみると興味深く思えるところもあった。

『山道具 選び方、使い方』高橋庄太郎(エイ出版社)読了

新刊当時、書店で立ち読みし、次回買おうと思っていたらなくなっていた本書。

そのまま忘れてたんだけど、ふと思い出して購入。

本当に山道具が網羅されているイメージ。特にマニアックなことが書いてあるわけではないけど、ときどきなるほどと思うようなノウハウもあったりして見逃せない。

それにフルカラーというのがいい。手元において、ときどきパラパラめくるだけでも山を思い出して楽しい。初心者~中級者にはかなりオススメできる。

『「豊かな地域」はどこがちがうのか――地域間競争の時代』根本祐二(筑摩書房)読了

年代別の人口がどのように推移するかをグラフに描き(コーホート図)、その結果から地域の特性・問題点を把握し、人口減少・活気減退に悩む都市の処方箋とするというのが本書の主旨(だと思う)。とはいえ正直タイトルは「釣り」といっていいだろう。

最初に出てくる例は大変鮮やかでなるほどと唸らされるが、ページが進むにつれだんだんグダグダになっていき、拡散したまま終わる。

ただ、年代別人口の推移というのは重要な話だと思うけど、意外に見落とされている気もする。そこで俺もH17、H22の国勢調査を使って、地元のコーホート図を描いてみた(データの検索からグラフ作成まで所要時間は10分ほど)ところ、15~19、20~24の年代で急激に人口が増え、25~29で激減、その後は55~59までの年代で少し増えている、といった格好。

地元には大きな大学のキャンパスがあるので学生が流入。卒業と同時に就職のため他の地方へ行き人口が減るが、子育て世代がまた流入してくる――。非常に判りやすい話だった。

『ブータン――「幸福な国」の不都合な真実』根本かおる(河出書房新社)読了

GNHで有名なブータン。国王の来日で騒がれていた頃、「実はあまり民主化されてないし、そんなに幸せでもないよ」といった話は、各所で指摘されてるのを見ていた。

本書はブータンの歴史をなぞりつつ、UNHCRで働いていた著者が自らも直接接したブータン難民の窮状を描いている。

著者も指摘しているとおり、スーダンやウガンダなどの難民に比べ緊急度が低いとはいえ、祖国から追い出される悲哀は察するに余りある。著者が語る難民キャンプでの苦労話からもそういったことがうかがえる(ただ個人的にはこの部分のウェイトを減らし、俯瞰した話を増やしてほしかった)。

日本は難民の受け入れに関しては国際的に大きく遅れを取っている。他方、日本の人口は減りつつある。人口問題と難民の受け入れ。直接とは言わないまでも、なにがしかの「きっかけ」にできないものか。

『新しいウイルス入門』武村政春(講談社)読了

本書を読む前にウイルスについて知っていた(思い込み含む)こと。

  • 細菌に比べ、基本的には非常に小さいものが多い(ただし、規格外に大きいものも見つかっている)。
  • 自己増殖できない。
  • 生物かどうか微妙。
  • 抗生物質が効<かない。

これらの知識が大幅にアップデイトされた(用語については覚えきれずにパンクだ……)。

また、ウイルスの一般的な/特殊な増殖のメカニズムからうかがわれるその起源については、生命体の定義や誕生に関わる大きな鍵にもなりそうとのことで、大変興味がそそられた。

あとは……今までレトロウイルスを「レトロ(古い)(な)ウイルス」という命名だと思い込んでたんだけど(「古細菌」みたいな)、reverse transcriptaseだったとは……。RNAから逆転写を行うってのは知ってたはずなのに、これは恥ずかしかった。