『折れた竜骨』米澤穂信(東京創元社)読了

ミステリィをファンタジィの枠組みに上手く合わせ込んだ作品。

後半の謎2つが事前に読み解けてしまったため、ミステリィとしてのおもしろさは減じたが、そうでなければもっと楽しめただろう。

とはいえ、ミステリィとしても十分にフェア(細かく言えばキリがないが)だし、なにより挑戦だし、好感を持てる作品だった。

『女騎士さん、ジャスコ行こうよ2』伊藤ヒロ(KADOKAWA/メディアファクトリー)読了

相変わらず中身がまったくないくせに、キャラの個性、軽妙なやりとり、ちょっとしたお涙、バカバカしいオチなどをちりばめて、いつの間にか読み終えさせる「手口」には恐れ入る。

これぞ(悪い意味かついい意味での)「ザ・ラノベ」なのかもしれない。

『オービタル・クラウド』藤井太洋(早川書房)読了

秀作SF。センス・オブ・ワンダーを強く感じさせるというよりはギミックで力押しするタイプの。

骨子となるギミックの中で個人的にちょっと拍子抜けしたのは、テザーの素材。技術的背景がしっかりしてる(少なくともそう見える)分、後半になるまで言及がなかったのに、「それしかないよな」的なものだとすっと触れてあとはそのまま、というのは残念だった。

まあそれしかないけど、かといって目新しさもない。でも重要な素材、ということになれば、あんな感じになるのかなとは思うが。

とはいえ、テザー推進というアイディアは非常におもしろいし、興味を持って読めた。

コンピューター関連のテクノロジィについては、それは違うだろ、と言いたくなるほどの部分はなかったけど(気になったところはあった)、重厚さが感じられなかった(これは作者の知識の問題というよりもストーリィとの一体感の問題かも)。ということは、知らない分野もその筋の人から見るとそうなのかもしれない。

ストーリィ的には正直「えっ」という部分は結構あった。このあたりが解消されるともっと没入できると思うんだが。

とまあいろいろ書いたけど、これだけのものを完成させるのはすごい。筆者のほかの作品も読んでみたいし、今後にも期待したい。

『艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆 2~4』内田弘樹(KADOKAWA/富士見書房)読了

ブラウザゲイム『艦これ』のイヴェントをもとにしているとあって、参加した提督にとっては、さまざま思い入れを感じることができる。

ただ艦娘の「過去の祖国が正しかったのか間違ってたのかは判らんが――云々」という心理描写があるたびに冷めてしまうのが残念なところ。史実とリンクさせ、かつマイルドに受け入れられるような記述としてそういう妥協点になるのは理解できるんだが、冷めるものは冷める。

とはいえ、艦娘としての戦術や戦闘描写もこなれてきてアツい展開も楽しめるので、続刊を楽しみにしたい。

『エスケヱプ・スピヰド』九岡望(アスキーメディアワークス)読了

新人の作品とは思えない完成度ではあった。が、設定も展開も描写も特に引き込まれるような部分がない、なんつーか単なる優等生。

1巻ものかと思ってたが、どうやら全7巻で、綺麗に終わってるらしい。これが順当にレヴェルアップしていってるならよいものになってる可能性はある。ちょっと続きに興味がわいた。7冊読むのは若干面倒な気はするが。

『図解入門よくわかる最新船舶の基本と仕組み』川崎豊彦(秀和システム)読了

ぼんやりと知っていたことからまったく知らなかったことまで、船についての知識をアップデイト。

個人的に収穫だったのは、レシプロエンジン、蒸気タービン、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービンの違いがやっと判ったこと(ガソリンとディーゼルについての細かいメカニズムはまだはっきりしてないが)。今までぼんやりとしてたところだったからこれはよかった。

『武に身を捧げて百と余年。エルフでやり直す武者修行 1~2』赤石赫々(KADOKAWA/富士見書房)読了

人の身で武術を極めた達人が天寿を全うした後、エルフに転生してさらなる高みを目指す。なかなかおもしろい設定で、1巻は楽しめた。

が、続けていくとなると設定一発では息切れするのは当然で、ほかのおもしろみが問われてくるところなんだが、2巻ではその部分が足りず、やや力不足の感。

また、個人的には、転生後の強さの設定や、文章での格闘戦などもどうかなと思うところがあり、このままではジリ貧な気がする。

次に期待。

『PG14(パラグラフ・フォーティーン)』日野亘(一二三書房)読了

14へ進む――。

ピップとなって、エクスカリバーJr.とともに冒険の日々を過ごした人間にとっては、懐かしくも恐ろしいこのフレーズがテーマとなった小説。

自らの運命の分岐が「選択*視*」として見える主人公が、その力を駆使しつつ、かつ単純に運命の流れに棹ささず、切り拓こうとする、というお話。

設定も展開もきわめてゲイム的、というか完全にゲイムのほうが向いていると読む前も読んだ後も俺の中満場一致だったんだが、小説でもまあおもしろさはあった。通常の地の文と「選択*視*」とで同じような文章を2回読まされたりする部分をもう少し工夫してもらえるといいんだが……。

ともあれ、伏線もまったく回収できていないので、続刊が出ることもあるんだろうが……やっぱゲイムでしょ。