『村上海賊の娘 上巻・下巻』和田竜(新潮社)読了

前半の退屈な展開と主人公のヘタレ具合を少々ウンザリしながら読んでいたが、後半に入って一気に潮目を変え、1日の戦いを濃密に描くあたりは、これぞエンターテインメントと感心させられた。

が、「のぼうの城」でもそうだった(原作未読。映画の話)んだが女性主人公のその後が……。史実でとっている行動が、本書で描かれている姿からそのまますなおには想像できないため、ああ、これフィクションだねと襟元を掴んで一気に引き戻される感じが個人的にはいただけない。

まったく気にならない人もいるんだろうが、俺はちょっとなあ。

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか1~8、外伝 ソード・オラトリア 1~4』大森藤ノ(SBクリエイティブ)読了

一発ネタのような作品や、作者の中でもぼんやりとしか方向性が見えなかったような作品でも、シリーズが続いていくうちに次第に洗練されたり、方向性が明確になっていったりして思わぬ成長を遂げるものがある。

本書もそのたぐいだと思う。読んでいくうちにいろんなことを考えていたのだが、1巻を読んだ時から時間も経っているため、忘れている感想も多い。なるべく思い出しながら、考えていたことを個条書きにしてみようと思う。

  • ステイタス・スキル・アビリティetc. 初見の印象は、「ゲイム的、あまりにゲイム的」。小説内の地の文章でもこういったものがしれっと出てくるようになったんだなあとある意味感慨深かった。
  • ホビットがパルゥムになったのは、権利関係だろうな。
  • いざという場面でのヘスティアの包容力半端ない。さすがリアル女神。
  • 冒険者が次々に死ぬような厳しい世界観のはずなのに、そういった泥臭い部分がまったく感じられない。まさにゲイムのようにデジタルで清潔な世界。うそ臭さとうさん臭さが臭う。あ、皆さん遠征の際のトイレってどうしてるんですかね?
  • これはもしかして貴種流離譚か? いや、そうでないにせよ、意外とギリシャ神話(主に?)を踏まえた造りになっていて、おもしろいかもしれない。そこからどう逸脱していく(させていく)のかが問われそうではあるが。
  • 主人公ベルのスキル「憧憬一途(リアリス・フレーゼ)」。アイズへの想いが彼の成長を形作ってる。もしそのアイズがいなくなったら? たとえば彼女が殺されて、スキルを失ったベルの喪失と再生の物語になったりしたら相当読み応えのあるものも作れそうだ。ま、ないだろうけど。
  • しかし、現正式タイトル『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』と、旧タイトルかつ現サブタイトル『ファミリア・ミィス』は、物語の主題自体が異なっている。これは、Web時代と書籍発行時で構想が変わったということだろうか。単にキャッチーにしただけ、なんていう度しがたい話ではないだろう……さすがに。
  • 『ソード・オラトリア』を読んで――。あ、やっぱアイズ死亡とかないね。完全準主人公だね、彼女。
  • 7巻の春姫。これはひどかった。娼婦の問題(そして娼婦と英雄の関係)を真正面から描くのかと期待してたら、最後の最後にひどい肩透かし。鎖骨のあたりで嫌な予感はしてたが、なんの工夫もなくそのまま処女でした、とか。床入りで娼婦が気絶したからってみんながみんな放っておくかよ。結局俺TUEEEと処女信仰に迎合してるだけなのかと思うと心底ガッカリ。まさに古の英雄譚から真に一歩を踏み出す新たな英雄譚(この件については実際はそうでもないと思うが、少なくとも心意気として)の始まりを告げられたはずなのに。はっきりとこの展開は物語の汚点だったと思う。ま、ダンジョンでの死にせよ、この作品は、辛いものや汚いものと真っ向から向き合う気がないというのがよく判った。
  • 読んできて感じたが、もしかすると『ダンジョンの出会い』も含まれて『ファミリア・ミィス』になるんだろうか。
  • 8巻における各キャラの思慕の形の表現はどれもなかなかだった。想いを再確認するリリなんかは定番だけど気に入った。最後のおねーさんキャラも。
  • なかでも8巻におけるベルとヘスティアの物語は大変大変よかった。あとがきで作者も書いていたとおり、人間と神の愛の形(の道標)を示せたのは、今後にとって大きな収穫だったと思う。俺は断然ダンジョンの出会いより家族の物語派なので、アイズとベルというしょーもない組み合わせには大反対(まあ謎を持った2人なので、これからいろいろ話がぶっこまれて印象も変わるかもしれないが)。誰かといえばリュー推しだけど、ヘスティアでもリリでもいい。まーだいぶ落ちるがシルでもいい。

以上思いついたことを書き連ねてみた。最後に書いた人間と神の愛について。形を示したのはえらいと思うが、ベルとヘスティアの関係はあーなるのかなーとか考えると、個人的にはあまり楽しくはない方向になる。

まあ、キレイなものだけ描いていくつもりに思える部分は相当気に食わないけど、楽しみな部分も多い作品。今後も期待する。

『はたらく魔王さま! (12)~(13)』和ヶ原聡司(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)読了

かなりいろんな展開があった2冊だけど、ストーリィの根幹としては、「何をしてきたのか」から「何をするのか」に主題が移りつつある。

個人的には「何をしてきたのか」の部分は非常に重要で、物語の登場人物の間で解決しつつはあっても、その他大勢のエンテ・イスラの民や魔族にとってはまったくもって未解決なので、その点は大問題だと考えている。

まあまったくなおざりにされることはないとは思うが、主題から外れつつあるところはちょっと気になる。

それとは別に「乙女たち」の心情部分については、共感できるとか心を打つとか言ったたぐいのものではないが、読んでいてもすっと馴染んでいくような印象でなかなかよかった。

まあ個人的には千穂よりも恵美や鈴乃にエールを送りたい。

『艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!4 』築地俊彦(KADOKAWA/エンターブレイン)読了

安心の『かげばつ』。

(古き良き)ジャンプ的なアツい展開は、お祭り騒ぎの今回でも健在。まだまだダレるようなこともなく、楽しめた。

あいかわらず大型艦の影が薄いのは、長門嫁の俺にとって残念ではあるが。

『現代日本にやってきたセガの女神にありがちなこと (1)~(2)』師走トオル(アスキー・メディアワークス)読了

作者が元セガ関係者だけあって、相当ディープなネタもぶっこまれており、かなりのおっさんホイホイ。

ストーリィがどうのとかいう作品でもないので、思いついた時に出してもらえればそれでいい感じ。

しっかしPCエンジンがガン無視されているのはいただけんな。

『クトゥルフ神話TRPG リプレイ 御津門学園ゲーム部の冒涜的な活動』内山靖二郎(KADOKAWA/エンターブレイン)読了

これまた「ザ・ジャパニーズ・クトゥルフ」。

ただ少し違うのは、プレイヤー陣がラノベ小説家で、なかにはTRPGにあまり親しくない人がいるというところ。

これがよい方向に転んだか悪い方向に転んだかというと……リプレイとしてはあまり好ましくない方向になっていたのかなと。

マスターとの駆け引き、というか、プレイヤーがやりたいと思ったことをするという意味で、まさに一般人のセッションに近いので、最終的に完成する物語の魅力としては、残念ながら劣っていた。

まあこういう人たちが慣れてきて、マスターと一緒に物語を創るという目的まで見通せるようになれば、よりおもしろくなるのかもしれないが。

『絶深海のソラリス I~II』らきるち(KADOKAWA / メディアファクトリー)読了

この小説に関しては、1巻が出た際にレビュー等でウワサを聞いて興味を持っていたんだが、その時点で読まず、2巻が刊行された直後というタイミングで読めたことは、結果として非常に幸運だった。

1巻は主人公の原動力を生み出す種となる物語で、実際は壮大なプロローグ。たいへん無残な結末を迎えるので、そこで終わってしまっていたら、相当胸が痛むし、人によっては後味悪く感じるのも無理はない。

が、1巻があってこそ2巻の展開が生きるし(というかそれがなくては2巻は存在しない)、あってこそラストのシャロンの想いとセリフがきらめきと重みを持つ。

1巻があるがゆえに、その想いが果たされるかには一抹の不安もあるが、もし果たされないとしてもそこに理由と美しさがあるのだろうという信頼感はある(ちなみに個人的に2巻の後半部は途中でネタが割れた)。

今後がおおいに楽しみな作品ができてうれしい。

『武に身を捧げて百と余年。エルフでやり直す武者修行 (3) 』赤石赫々(KADOKAWA/富士見書房)読了

もはや惰性。ワンパターンとなってしまっているのでなんらかのテコ入れが欲しい。

とはいえ、ちょっと難しそうな気はするが……。まあキャラの魅力を上げてそっちを押していく方向かなあ。

『彼女がフラグをおられたら 大丈夫、この体育祭は安全だから、絶対MVPを取れるわよ 』

第一部最終盤と第二部序盤は、ストーリィの大きな転換により、それまでの雰囲気より硬質な展開が続いていたが、それもようやく軌道に乗り始め、以前の『がをられ』が戻ってきた。

と同時に転換がもたらすループ感がいい感じに仕上がってきている。

うーん、なんというか、さすがエロゲライター、という感じ。普通の小説家なら、こういったストーリィ転換をこれだけの時間をかけて書けない(書かない)だろうと思う。

全体としては危なっかしいストーリィ構成に見えているが、これまでの流れを見るとなんとかなりそうなので、今後が楽しみ。