もし人生をやり直せるならどんな職業についていたか――。俺はあまりこういうことを考えないんだけど、それでもたまにはそんなことを思う日もある。でもっていろいろ夢想するけど、やっぱりIT関連だなと自己完結しそうになる反面、ただひとつ、金融関係の仕事でもよかったかなとしばしば考える。
金融が持つ巨大なエネルギー(ダイレクトに「カネ」という意味も含めて)と、それを求めて集まってくるエネルギッシュな人間、そのうねりの中に身を置いてみるのも楽しかったんじゃないか、そんなふうに思うことがある。
実際のところ、トレーダーとしてはがめつさが足りないし、クオンツとしては頭のキレが足りないし、あまり向いてないんだろうという自己分析はあるけど(あ、もちろん身を置きたいのはGSやモルガンクラスな。野村證券とかノーサンキュー)。
話はそれたけど、本書は金融業界が爆発的な進化を遂げるなかで、ひとりの(一流の)学者がウォール街を目指すことになった過程が自伝的に語られている。ただ、まさに学問の世界から金融の世界へ転身を図ったその理由や葛藤(あったのは間違いない)が今ひとつはっきり描かれていなかったのが残念。
とはいえ、筆者がたどった人生は大変興味深く、読み物としてもおもしろかった。
P.S.
筆者が金融モデルはあくまでモデルでしかなく、金融の大統一理論はなしえないだろうと語っていたことに安心感を覚えた。今在まで読んできた書籍では、モデル万能とまでは言わないが、それに類する書き口のものが多かった気がしたので。問題は現実とモデルの間をどうやって埋めるか、というところだが、「直観」になるのかなあ。でもそれって結局はモデルを精緻化する方向だよねえ……。